1958 Gibson Les Paul Special TV Yellow

1958 Gibson Les Paul Special TV Yellow

レス・ポール・スペシャルが登場したのは1955年。レス・ポール(スタンダード)とジュニアの中間モデルとして製品化されました。

ボディはスタンダードのようにメイプルをトップに貼らず、ジュニアと同様、マホガニー単板を採用。ちなみにボディ用のマホガニー材はスタンダードと共用されていたそうです。

ネックもマホガニー1ピースで、ヘッド部のみ両サイドに耳貼りされた3ピース構造。ヘッド面には黒い付き板が貼られ、白蝶貝を使用したブランド・ロゴが埋め込まれています。

ヘッド中央には“Les Paul TV MODEL”と塗装の上からシルク・スクリーンで転写されていますが、この個体には擦られた跡があり、文字が薄く残っている状態。塗装の上に施されているため、指で擦るだけでも文字は消えてしまうほどです。

[TV MODEL]のフィニッシュ名は“ライムド・マホガニー”とも呼ばれています。これは当時の白黒テレビで見栄えするように、この色が考えられたと言われております。サンバーストやチェリー・レッドに比べると生産本数は少なく、レア・カラー・モデルとして扱われています。

ブリッジはバー・タイプのものを採用。当時の社長テッド・マッカーティ氏が考案したもののため“マッカーティ・ブリッジ”とも呼ばれています。ブリッジはスラントして取り付けられていますが、これはスタッド部にイモ・ネジが付いており、ここでスラント角度を変えてオクターブのイントネーションを合わせます。

弦はブリッジの上に巻きつけるようにして張ります。弦とブリッジとの密着度が高いため、弦振動がギター全体に伝わりやすく、それが起因して太い音がします。特にフロント・ピックアップの音の良さは、ビックリするくらいに太く抜けてきて、感動ものです。

ネックのジョイント方法は“ボックス・ジョイント方式”と呼ばれ、スタンダードのディープ・ジョイントとは異なり、カッタウェイ側にもネックとの接着がされるよう壁が作られ、ネックを差し込む部分が箱上になっています。これにより接着面積を確保し、強度を保っています。

シングル・カッタウェイ仕様は1958年まで生産。よってこの個体は最終年モデルとなります。この後、ダブル・カッタウェイに仕様変更されます。

ピックアップはふたつのP-90がフラット・トップのボディにマウントされており、セレクター・スイッチはボディ上部左側ショルダー部分に設置。2ピックアップ仕様のため、フロント/ミックス/リアと3つの音色バリエーションを持ち、ジュニアと比べて豊富な音色を楽しめます。

近年は日本のミュージック・シーンでもスペシャルを使っているアーティストも増えており、中でも奥田民生が使用していることもあり、人気が急上昇中! ロックンロール・ギターと呼ぶに相応しい男侠あふれるルックスとサウンドで、半世紀もの間、このサウンドが必要とされ続け、これからもロックのスピリットを継承していく、ロマンを感じる1本です。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

御茶ノ水本店FINEST GUITARS

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