1974-75 Gibson ES-335TD Cherry

1974-75 Gibson ES-335TD Cherry

“セミ・アコースティック”というジャンルの中で一番人気なのは、やはりES-335でしょう。各年代により構造が異なり、それが起因してキャラクターにも違いがあります。今回は1974?75年製の個体を参考にしながら紹介したいと思います。

70年代に入りますと、ギブソンの親会社がChicago Musical Instrumentsからノーリンへ交代し、その影響で製造方法も変わりました。

1969年にはネックが1ピースから3ピース構造に変更され、1974年にはメイプル材による3ピース構造になります。この個体はマホガニー・ネックですので、変更される前の過渡期の仕様ということがわかります。

Fホールから覗くことができるラベルは、60年代のものは楕円型のオレンジでしたが、70年代になりますとスクエア・シェイプのブラックとパープル色が入った仕様になります。あとヘッド裏に“MADE IN USA”と刻印されるようになったのも、ノーリン期固有の仕様となっています。

サウンド面に影響を及ぼす仕様変更としては、1973年頃からセンター・ブロックがなくなったことが大きいでしょう。1974年にはピックアップ・キャビティがさらに大きくなり、その影響で箱鳴り感が増してきます。

この個体を例に取ると、とてもキレイなクリーン・トーンが印象的で、軽くドライブさせた時の軽やかなハムバッカーのトーンが魅力的です。

この個体はグローバー製ロトマティック・ペグに交換されています。この改造によって、ヘッドに重量が増し、ネックがより振動するようになり、サステインも増大。腰のあるトーンが得られるようになり、音抜けも良くなりました。

オリジナルはトラピーズ・テイルピースですが、これもストップ・テイルピースに交換され、エリック・クラプトンがクリーム時代から所有していたES-335風に改造されています。

今回の1980年製も前述した特徴を持ち、時代感が味わえる1本となっております。楽器を見るとその時代に必要とされていたサウンドや用途などが製品に反映されていて、非常に興味深いものがあります。フェンダーのギターはミュージシャンの意見と技術者の開発能力により進化してきたブランドで、今後もユーザーとのコミュニケーションにより、その時代ごとのサウンドをクリエイトしていくことでしょう。

クラプトンの所有器は1964年製でしたが、現在の値段がとんでもないことになっています。その点70年代製ですと、その価格は新品とそれほど変わりませんし、稀少性が薄れている分、気軽に持ち運びができるので、今となっては実用性が買われ、人気のあるビンテージ・ギターとなっています。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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