1968 Fender Telecaster Bass Natural

1968 Fender Telecaster Bass Natural

1968年フェンダー社は15年以上も前の資料を参考にオリジナル・プレシジョン・ベースを復刻させました。発売当初のプレシジョン・ベースは、ボディの外周が丸く面取りされておらず、コンター加工もないなど、テレキャスターを土台にした作りが多く見られます。その一方でボディ・デザインは、ホーンを長く伸ばしたシェイプが採用され、これが後に発売されるストラトキャスターへ影響を与えました。

1957年にボディ・シェイプが変更になるまでの間、1954年にエルボー部分にコンター加工されたりと、だんだんと丸み帯びていき、翌年にはピックガードが黒いベークライト製から白プラスティックに変更されます。1968年に復刻された時にはボディ形状は初期の角張ったものですが、ピックガードは白の1ピースのものが採用されました。

テレキャスター・ベースの初期モデルは、1950年代モデルのようにネックと指板が一体となったメイプル1ピース・ネックではなく、指板部をネック本体と貼り合わせた通称“貼りメイプル指板”でした。今回の1968年製はその後1ピース・ネックに変更されたもので、ペグは1966年よりジャズ・ベースやムスタング・ベースなどに使用されていた“パドル・ペグ(丸型)”が採用されています。このパドル・ペグは1968年まで使用されており、この箇所を見れば年代及び、初期仕様だということがをおおよそ判別することができます。

ブリッジはオリジナル・プレシジョンと同様に2ウェイ・サドルが標準装備されていますが、この個体にはブリッジ・プレートごと交換されており、4ウェイ・サドルとなっております。実際この方がオクターブ調整がしやすいので、有難い改造と言えるでしょう。本来はボディ裏から弦を通すスタイルで、ボディ裏にブッシュが4つ埋め込まれていますが、これもブリッジ交換時に取り外されております。

1968年に復刻されたテレキャスター・ベースは1979年まで生産されました。その間にピンク・ペイズリー、ブルー・フローラルといった、当時の流行をよく捉えたサイケ・デザインが採り入れられたり、1970年にはフレットレスがオプションで登場し、1972年にはハムバッカー・ピックアップに変更されました。

シングルコイル・ピックアップのものは外観が小さいゆえに音量も小さいのではと思われがちですが、実際は太く、奥深い、豊かな低音を出力してくれ、その一方でテレキャスターのような芯のあるサウンドも出てくれることもあり、非常にロック向きです。今ではフェンダー・ジャパン、カスタムショップなどで再生産されることもありますが、1968年頃までのオリジナル器はとても音が良く、40年も経過して今なおルックスとサウンドとも共になかなかのものです。  このテレキャスター・ベースの使い手として有名なのがZZトップのダスティ・ヒル。骨太なアメリカン・ロックをプレイするのに最適ではないでしょうか?

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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