1967 Gibson Hummingbird Natural

1967 Gibson Hummingbird Natural

ギブソンはフラット・トップ・アコースティック・ギターのラインナップ中、初のスクエア・ショルダー・シェイプを採用したモデル、ハミングバードを1960年に発表しました。

このモデルの特徴は何と言っても見た目の華やかさ。その中で特にピックガードに目を惹きつけられますが、これを手掛けたのがデザイナーのハートフォード・シュナイダー。モチーフはモデル名にもなっている蜂鳥(ハミングバード)で、ハチドリが花に集まる様が描かれています。奇抜とも言えるピックガードの形状と絵柄が非常にマッチしており、素晴らしいデザインに仕上がっております。

スクエア・ショルダー・シェイプはマーティンのドレッドノートを強く意識したものですが、ギブソンは独自性を出すためにデザインを重要視し、これが功を奏し、商業的に成功しました。実際、生産本数は1960年は約150本でしたが、1963年には10倍近くの生産本数までアップし、大ヒットとなりました。

ボディがスクエア・ショルダー・シェイプになったことにより、サウンドはパワフルになったのですが、さらに音量も稼ぐため、ブレイシングを薄くするなどの工夫が凝らされています。これは30?50年代のスタイルを利用したもので、音量だけでなく温かみのあるトーンを出すのにも貢献しました。

発売当初は24.75インチ(628.65mm)スケールでしたが、1962?63年頃にはダブ用のボディやネックが生産ラインで余ったことにより、これらを流用していたこともありました。本来ハミングバードはボディ・サイド&バックがマホガニーのはずが、メイプルのものがあったり、ダブに用いられていた25.5インチ(647.7mm)のネックが付けられたりと面白いものが存在します。

1963年には今回紹介の個体のようにナチュラル・フィニッシュのものが登場し、1960年代後半には25.5インチ・スケールのものが多くなります。  写真の1967年製もロング・スケールが採用されており、ブリッジはアジャスタブル・サドルでしたが、穴を塞ぎストレート・サドルに切り直しています。結果、24.75インチ・スケールのものより豊かなサステインが得られ、加えてサドル交換されたこともサウンドを活性化させた要因となっています。

ヘッド中央部はクラウン・インレイで飾られ、指板インレイはパラレログラム、ロゴはゴシック・タイプ、ペグにはキーストーン・タイプのクルーソンが使用されるなど、ギブソンらしい派手なルックスで仕上げられております。 この時期のものでクルーソン・ペグの2コブのツマミを1コブに削り落としているものも見かけます。これはコブがヘッドにぶつかることを考慮し、わざと2コブのものを1コブにしていると言われています。

1960年代に登場したハミングバードは鮮やかなチェリー・サンバーストと、昔ながらのナチュラル・フィニッシュという2色展開で、見栄えのするデザインゆえに見た目も重要視するアーティストから高い支持を受けています。ただルックスだけでなく、ギブソン・サウンドが確立されており、しっかりとしたコンセプトが存在しているがゆえに、今でも長く愛されているのだと思います。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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