Vintage Guitar Gallery

1959 Martin D-28

今回はマーティンの代表モデル、D-28を紹介します。1934年に14フレット仕様のD-28が誕生してから70年以上もの歳月が経ち、今なおアコースティック・ギターのスタンダードとして人気があります。その中で特に人気が高いのは、ブラジリアン・ローズウッドを使用したモデルでしょう。今回の1959年製はもちろんハカランダを使用しており、弾くと人気の秘密がわかります。

D-28も他のモデル同様、時代によりさまざまな仕様変更を受けました。その中からポイントとなる箇所を挙げてみましょう。まず14フレット仕様が発売された1934年に、それまで“バー・タイプ”と呼ばれるフレットから“Tタイプ”（現在あらゆるギターに採用されている形）へ変更。これによりフレットの幅と高さが大きくなり、より弦を押さえやすくなりました。サウンド的には音のタッチが異なり、ネックの振動にも影響を与えました。さらに同年、ネックの補強材がエボニーからスティールTバーに変更されたことも大きな仕様変更でした。

アコースティック・ギターのサウンドに最も影響力を及ぼす箇所がボディ・トップです。1934?38年までの間、ボディ・トップには“フォワード・シフテッド・ブレイシング”と呼ばれる力木の配置法を採用。基本はXブレイシングなのですが、X字となった力木の交点の位置に特徴があります。その位置はサウンド・ホールからブリッジ方向へ1インチ(25.4mm)のところにあり、かなりサウンド・ホールに近接していました。フォワード・シフテッド・ブレイシングの利点は、力木の交点をボディ上部へ位置させることにより、ボディ下部における有効振動面積を増やせることで、これにより鳴りを最大限まで引き出すことが可能です。

マーティン社では現在もヴィンテージ・シリーズで、初期のスタイルをレプリカしたフォワード・シフテッド・ブレイシングを採用していますが、1939?68年までの期間は廃止しておりました。変更後のブレイシングは交点を、サウンド・ホールからブリッジ方向へ41.3mmまで下げ、なおかつXブレイシング自体の交差角度も狭くなります。これはトップ浮きを防止しするための対処法として設計されたものでしたが、今度は逆にブリッジ側にXブレイシングが近づいたことにより、ブリッジ下の振動がやや抑えられてしまいました。しかし、新たなブレイシング・スタイルを作ったことにより、マーティン・ギターの音色バリエーションが増え、これが幅広いジャンルのミュージシャンに指示される所以にもなっています。

1944年には指板インレイがダイアモンド＆スクエア・インレイからスモール・ドットに替わり、1946年にはラージ・ドットに変更されます。翌1947年にはへリンボーン・トリムから白黒のバインディングに変更され、この時期にかなり見た目の印象が変わります。1955年にはピックガードの形状が少し角張り、少しシャープな顔つきになります。しかしこのピックガードは1960年になりますと、元の形状に戻ります。

1958年に、これまでのスモール・タイプのグローバーかクルーソン・ペグから、ツマミの大きなグローバー・ロトマティックに変更されます。今回の1959年製はこのロトマティック・タイプに変更になったばかりのモデルで、大きめのドット・インレイ、白黒バインディング、少しシャープなピックガード、ロング・サドルと、この時代固有の特徴があり、サウンド面でもよりパワフルになりだした時期でもあります。その一因を作ったのがグローバー・ロトマティック・ペグです。クルーソン・タイプのペグに比べ、グローバー・ロトマティック・ペグは重みがあり、これを搭載することにより、ヘッドに重心がかかり、ネックの振幅が大きくなりました。音色がヘヴィになり、かつサステインも増し、ロック・テイストあふれるサウンドになったとも言うことができます。1950年代後期のギターはアコースティック・ギターに限らず、エレキ・ギターも非常に人気があります。これは楽器として現代の音楽にマッチしたサウンドが、この時代に完成したからなのではないでしょうか。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し（現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍）、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60～70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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