1972-73 Fender Stratocaster Lefty White

1972-73 Fender Stratocaster Lefty White

今回は大変珍しい70年代の左用ストラトキャスターを紹介。元のカラーはホワイトだが色焼けによって黄ばんでいる。ところどころ擦り減った部分からオリジナル・カラーのホワイトが見え、その下にアンダーコートのクリア(ポリ塗装)が顔を覗かせている。さらに塗装が剥げた箇所にはボディの地肌が見え、使用材がアルダーということが確認できる。ヘッド表面がネックの他の部分より焼けやすいのは、他の部分がポリ塗装なのに対し、ヘッド面だけ最終段階でラッカー吹いているからで、これは70年代の特徴となっている。

メイプル指板は60年代後半よりオプションで復活したが、1971年に標準仕様となり、オーダー数も多くなったという。ブリッジを見ると、ダイキャスト製のサドルが確認できる。これは1972年頃に行なわれた仕様変更で、この時にシンクロナイズド・トレモロ・ユニットはブロックと一体型のダイキャスト製となった。

今回の個体ではそれ以前のセパレート型のスティール・ブロックが搭載されている。このブロックだが1971年頃に存在するサイドが角張ったタイプのもので、これは過渡期の仕様として知られる。

ピックアップは、各弦ごとにポールピースの高さが異なる“スタガード”タイプが1973年まで採用され、1974年以降からポールピースが均一の高さとなった“フラット・ポールピース”へと仕様変更となった。ちなみに本器は“フラット・ポールピース”へ移行する手前の仕様のため“スタガード・ポールピース”が採用されている。

ピックアップ・カバーを外して中を開けると、グレー・ボビンが付いていると思いきや、色の濃いボビンであった。1972年頃からグレーではなく色の濃いものが混在し、エナメル皮膜もこの頃よりより一層濃く硬くなり、一度断線すると途中からの巻き直しが難しい。

ネック・デイトは“0903 2823”。“09”はストラトを意味し、“03”はメイプル・ネック、“28”は28週目。最後の2桁“23”は年あるいは曜日として判断され、例えば“1”は月曜日、“2”は火曜日といった具合いになる。しかし、1974年頃までに、このふたつが入れ替わるケースもあり、最後の桁が曜日になるものが1973年以降に多く見られる。

今回のギターは左用だが、わざと右用にするため、ナットを替え、ストラップ・ピンも反対側の角に取り付けてある。いわゆる逆ジミヘン仕様で、ジョー・ペリーやイングヴェイ・マルムスティーンを筆頭に多くのギタリストがやっているモディファイである。見た目もクールで、カッコいい!

ネックの裏側は1972年より採用された“マイクロ・ティルト・アジャストメント”が仕込まれており、これによりネックの仕込み角度が調整できる仕組みになっている。上の2本は従来どおり木ネジを使用しているが、3本目のネジがボルト・ネジとなっているところがミソで、ボディとネックそれぞれのジョイント部に金属製の丸いディスクが仕込まれている。そしてネジはもう1本仕込まれており、そのイモ・ネジを調整することで、ネックの仕込み角度を変えることが可能となっている。

このネック・ジョイント機構やラージ・ヘッドなど、70年代のストラトは全体的に質感が重くなっていき、それに伴い、サウンドもヘヴィになっていった。さらに75年以降よりボディ材がアルダーからホワイト・アッシュに替わったことにより、ヘヴィ路線はさらに高まることになるが、本器はアルダー・ボディのため、昔ながらのテイストを程よく残している。

何よりもこのルックス……レフティ、ホワイト・ボディ、メイプル指板とくれば、ジミヘンがウッドストックで使用していたのと見た目上は一緒(ジミヘンのギターは貼りメイプルの60年代後期製だが……)。とにかく弾く気にさせるカッコ良さがあり、正に“ロック・ギター”と言わしめるものがある。オ~ジミー!

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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