1967 Fender Precision Bass Sunburst

1967 Fender Precision Bass Sunburst

1951年、フェンダーからエレクトリック・ベースが誕生した。ブロードキャスター(後のテレキャスター)の開発と同時に生まれ、今や音楽シーンには不可欠な楽器、プレシジョン・ベースがレオ・フェンダーとスタッフの力により製造されたのである。ちなみにモデル名の“プレシジョン”は“正確な”という意味だ。元来ベースはアップライト型を筆頭にフレットレス仕様が当たり前であったが、プレシジョン・ベースはギターと同様にフレット付きにすることで、より正確な音程が出せるというのを売りにしたのである。

見た目はテレキャスター風だが、スケールは34インチと今のエレクトリック・ベースの基本値に設定。このスケールは40年代よりレオのパートナーであったジョージ・フーラトンの意見により最終的に決定したと言われている。このことからレオは人の意見を聞く耳を持ち、それを形にできる柔軟性を持った人物であったことが分かる。レオ・フェンダーはさらなる進化を求めてミュージシャンやスタッフの協力により、プレシジョン・ベースを次々に進化させていくことになる。

今回紹介する1967年製のようなデザインに変わるのが1957年である。初めはメイプル1ピース・ネックにゴールド・アノダイズド・ピックガードという仕様であったが、1959年にはストラトやジャズマスターなどと同様に、ローズウッド指板にべっ甲柄のピックガードに仕様変更された。

指板は1965年まではハカランダが使用されていたが、ワシントン条約でブラジリアン・ローズウッドの輸出規制がかかり入手困難になったことにより、その後はインディアン・ローズウッドが採用されるようになった。

コントロール類は1ボリューム、1トーンと非常にシンプルなレイアウト。これによりストレートなサウンドを生み出し、加えて弾き手に余計なことを心配させず、プレイに専念できるという、非常にナイスな設計である。

ピックアップが1~2弦用と3~4弦用に分かれたスプリット・デザインになっているのもプレシジョン・ベースの特徴で、ここにも発明家としてのレオの天才ぶりを垣間見ることができる。

実はふたつのピックアップは、マグネットの向き及びコイルを巻く際の回転向きを、お互いが逆になるようにセットしていた。いわゆるダブル・コイルのハムバッカーと同じ構造にすることで、ノイズ対策をしていた。

ちなみにジャズ・ベースのフロントPUとリアPUも同様に、マグネットの向き及びコイルの巻き方向がお互いが逆になっている。ビンテージものをチェックする際、磁石を使いマグネットの向きを確認する方法もある。

ピックアップはストラトと同様、1960年代後半よりグレー・ボビンに変わり、フレットも少し太めのものが採用された。また塗装は1969年よりポリ・ウレタンに変更。

今回のプレシジョン・ベースはグレー・ボビンPUに、ラッカー塗装という仕様を持ち、レオがまだフェンダー社に在籍していた時代の名器と言うこともできる。

エレクトリック・ベースが普及化したことにより、ベースも大音量で演奏することが可能となり、そこからロック・ミュージックが誕生した。1960年代製のフェンダー・ベースは、黎明期に作られたものと同じ雰囲気を持つことから、弾いていて懐かしい気分にさせてくれる。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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