Vintage Guitar Gallery

1976 Gibson Firebird Sunburst

ギブソン・ギター変形シリーズの中で、斬新なフォルムを保ちつつも、どこか落ち着きのあるクールな佇まいも感じられるモデルがファイヤーバードであろう。ギブソン初のスルー・ネック構造を採用したモデルとして知られ、1960年代に諸事情により数々のマイナー・チェンジもされてきた歴史を持つ。発売は1963年で、スペックの違いにより、モデルが区分されていた。

ファイヤーバードIは、ミニ・ハムバッカー・ピックアップをひとつ搭載し、コントローラーは1ボリューム、1トーン。トレモロ・ユニットやバインディングはナシで、ドット・ポジションというシンプルなデザインに仕上げられた。

ファイヤーバードIIIは、ミニ・ハムバッカー・ピックアップをふたつ搭載し、コントロールは各PUに対しボリュームとトーンがあてがわれた4コントローラー仕様。ヴァイブローラ・トレモロ・ユニットを備え、ネックにはバインディングが巻かれ、ドット・ポジション・マーカーという仕様。ソニー・ランドレスが愛用していたことでも知られる渋いモデルである。

ファイヤーバードVは、IIIをより豪華にしたデラックス・ヴァイブローラーが搭載され、ポジション・マークはディッシュ型。現行復刻モデルで採用されているスタイルの原型となっている。

ファイヤーバードVIIは、ミニ・ハムバッカー・ピックアップが3つ、コントローラーが4つ、デラックス・ヴァイブローラーを搭載。指板にはブロック・ポジション・マーカーで飾られ、金属ハードウェア・パーツがゴールド・メッキと、最上級モデルにふさわしい豪華な仕様で作られた。

多様なモデル・ラインナップで登場したファイヤーバードも1965年の終わり頃にデザインが変更される。それまでの1弦側のカッタウェイの角が長いリバース・スタイルから、逆さまにひっくり返したようなボディ形状にモデル・チェンジとなり、これらは通称“ノン・リバース・ファイヤーバード”と呼ばれるようになる。

その他の変更箇所はスルー・ネックよりセット・ネックとなったこと。さらにファイヤーバードIとIIIに関しては、ミニ・ハムバッカーではなくP-90が搭載されるようになり、これによりサウンドも大きく変わった。ピックガードの形状も大きく変わり、ヘッドの形状もストラトのように6弦側より1弦側へペグが配列されるスタイルとなった。

今回の1976年製ファイヤーバードはアメリカ建国200周年を記念して、約300本の限定生産されたモデル。リバース・ボディがひさびさの復活を果たし、ピックガードに記された鳥のマークは星条旗に合わせトリコロール・カラーに仕上げられるなど、注目すべきポイントが多い。ミニ・ハムバッカーをふたつ搭載し、ネックにはバインディングが巻かれておらず、ドット・ポジション・マーカーを採用。

チューン・オー・マティック・ブリッジ／ストップ・テイルピースという仕様となり、これは60年代のオリジナルにはなかったスペックである。トレモロ・ユニットを搭載していない分、チューニングが安定しているところも特徴となっている。

ペグは60年代のリバース・モデルと同様、バンジョー用ぺグと良く似た特殊なデザインのものを採用。正面から見るとペグのツマミが見えないため、すっきりとした見た目を演出している。ペグの形状は大きめで、ヘッド面に対して直角に取り付けられている。ネックはセンター合わせの3ピース構造。1964年以降の60年代製のものは9ピースと、強度向上のための工夫がされていたが、再発モデルには採用はされることはなかった。

1963年?67年に生産され、その後1971年にメダリオンとして一度復活。そして1976年にアメリカ建国200周年記念モデルとして再登場したファイヤーバード。現在はレギュラー・シリーズやヒストリック・シリーズで生産されるなど、ギブソンにおいて欠かすことができないモデルとして定着を見せている。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し（現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍）、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60～70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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