60s Fender Stratocaster Extra Edition

60s Fender Stratocaster Extra Edition

今回はストラトキャスターの中で、1963年製と1965年製を比較検証し、紹介したい。ローズウッド指板のこの2本は、わずか2年の間にさまざまな仕様変更が行なわれた。ローズウッド指板が採用されたのは1959年で“スラブ・ボード”と呼ばれる、ネックと指板の接着面が平らになった、厚めのローズウッド指板が貼られていた。“スラブ・ボード”は1962年まで採用され、1962年中期には“ラウンド・ボード”と呼ばれる、指板のアールに合わせ曲線的に指板が貼られるようになった。

まずは今回の1963年製(画像:左列)の仕様から分析しよう。サンバーストの色合いだが、1963年になると赤みが残りやすくなり、はっきりとしたカラーリングが特徴。その一方で1962年までのサンバーストは赤みが抜けやすく、通称“ハニー・バースト”と呼ばれており、この褪色を抑えるために塗料の変更が行なわれた。

塗装の吹き方も1963年を境に、ネック・ポケットにハンドルを付け、ハンドルを持ちながら塗装を吹き付ける手法に変更。1963年以前までは、針金をボディの数箇所に刺して作業台から浮かせて吹き付ける方法であった。針金が刺さっていた箇所はネイルの跡として残り、これがボディの年式を判断材料となった。逆に1963年以降のボディの場合、ハンドルの付いていた箇所には塗装が乗らないため、そこから年代判別を行なうことができる。

また12フレット上のふたつのポジション・マークも1963年前半までのものは感覚が広く、後半から狭くなる。今回紹介している1963年製は、ポジション・マークの感覚が狭い後半型。ネック・デイトを見ると1963年10月とスタンプされている。

指板材は通称“ハカランダ”と呼ばれるブラジリアン・ローズウッドを使用。この頃のものは色が濃く、詰まった感じの艶のあるハカランダが使用されている。深みもありながら、強烈なアタック感のある独特のサウンドは1963年ならではの魅力だ。

続いて1965年製(画像:右列)だが、仕様変更の中で大きな箇所はヘッド・ロゴ。1963年までは通称“スパゲティ・ロゴ”と呼ばれる文字の線が細い感じの書体が用いられたが、1964年後半になると“トランジション・ロゴ”と呼ばれる太い書体になり、“Fender”のロゴが大きく目立つようになった。

ヘッドの形状も少し丸みを帯びた感じになった。指板は1965年までハカランダを使用していたが、1963年ほど色が濃くはなく、少し茶色がかった色合いのものがが多くなる。ポジション・マークはそれまで使われていたクレイ・ドットより、パーロイドのものに変更し、サイズも若干大き目になった。

塗装の触った感じも1965年製は1963年製に比べるとやや固めな印象。1965年はフェンダー社からCBS時代に移る過渡期で、この後ラージ・ヘッドに仕様変更になるなど、大きく変わり始める。

ピックアップは“グレー・ボビン”と呼ばれる、底面がグレーのファイバー紙になり、裏にはデイトがマジックで書かれている。ちなみに1965年製の個体には[9-22-65](1965年9月22日)と記されていた。“グレー・ボビン”のピックアップは1964年までのブラックに比べ、明るくサステインの効いた艶のある音が持ち味だ。

今回の1965年製はネック・プレートに刻まれたシリアル・ナンバーが“L”を先頭にした体系で、俗称“Lシリアル”と呼ばれている。なお“Lシリアル”は1965年の他、1963年にも存在し、共に人気が高い。 1965年後半になると“Lシリアル”は終わり、プレートに大きくFのイニシャルが刻印されるようになる。

“Lシリアル”のモデルは世界的に人気があり、探している人も大変多い。今回の2本のストラトには実際触れるだけでも感動し、認めてしまうようなオーラがある。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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