1969 Gibson Byrdland Sunburst

1969 Gibson Byrdland Sunburst

ギブソン・バードランドは、当時スタジオ・ミュージシャンとして活躍していたビリー・バードとハンク・ガーランドにあやかり、両名の苗字を融合させたモデル名を持つ。発売されたのが1955年。ボディはL-5を土台にした17インチ・サイズだが、厚みを薄くしたシン・ボディを採用。ボディ・トップがスプルース、サイド&バックがメイプルからなり、ショート・スケールを採用しているところが特徴だ。

1955年のデビュー当初に搭載されていたピックアップは、P-90シングルコイル。その後、1957年にレス・ポールと同様、ハムバッカー・ピックアップに仕様変更となった。また1960?68年までのものは、ボディのカッタウェイ部分が尖ったフローレンタイン仕様であったが、1969年より丸みの帯びたヴェネチアン・スタイルに戻された。今回紹介する個体は1969年製で、ヴェネチアン・カッタウェイに戻った初年度のものである。また淡いティーバーストはこの年代特有のもので、大変貴重な1本である。

バードランドの特徴は、わずか23 1/2インチ・スケールしかない、その短い弦長にある。ちなみに同じ17インチ・ボディ・サイズのL-5は、25 1/2インチもある(フェンダー・ストラトと同じスケール)。よってバードランドはL-5に対して、2インチ(約5センチ)も短いわけである。ちなみにネック・グリップもやや細身となっている。高級機種にふさわしくグレイドの高い材が使用されいてる。指板はエボニーで、ネックはウォルナットとフレイム・メイプルによる5ピース・ラミネイトを採用。この積層ネックにより、十分な強度を確保している。

バインディングも豪華で、ネックが5プライ、ボディが7プライとなっている。ポジション・マークは白蝶貝によるブロック・インレイ。摩擦に強く、エボニー指板との段差が出来にくいところが白蝶貝のいいところだ。

ピックアップはバードランドとES-350用に設計されたものを採用。通常のギブソンの弦間隔は0.4インチであるが、この2機種は0.36インチと狭めに設計されている。他のピックアップと全体幅及びポールピースのピッチやが異なるため、このピックアップを製造するためにわざわざ専用の治具を作っている。ギブソンがいかにこのモデルへ力を注いでいたか、わかるエピソードと言えよう。

電装パーツにも丁寧な仕事ぶりを見ることができる。外来ノイズを防ぐべく、ポットは円筒型のシールドボックスで覆ったタイプのものを使用。ポットの開口部を保護し、しっかりとシールド線を繋げており、さらにスイッチには切り替え時のスイッチング・ノイズを防ぐため、ラバーが取り付けてある。これによりスイッチング時の衝撃を防いでいる。

ヘッドには貫禄のあるトーチ・インレイが施されており、素材はメキシコ・アワビを使い、松明が火をともす様を上手く表現している。

またヘッドの付き板は5プライ・ネックの木目を90度ずらしながら、表と裏の両面に貼り合わせており、外周には5プライのバインディングが施してある。ジャズ・ギターゆえに太めのゲージを張ることも考え、強度面に工夫が見られる。表と裏の両面に付き板を貼り合わせているため、ネック裏を見ると、塗装のクラックが入っていることもあり、これがネック折れと誤解されがちだが、貼り合わせ部の塗装クラックのみという症状と見ていいであろう。

バードランドは何とも言えない甘い音色を持ち、デイヴィッド・T・ウォーカーやエリック・クラプトン、テッド・ニュージェントなどと幅広いアーティストから愛され、素晴らしい音を奏でています。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

御茶ノ水本店FINEST GUITARS

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