1974-75 Fender Stratocaster White

1974-75 Fender Stratocaster White

近年盛り上がりを見せている70年代ヴィンテージ。その中でも注目を浴びているのがフェンダー・ストラトキャスター、ということで今回は70年代ストラトに注目してみよう。この時代を象徴するスペックはラージ・ヘッド。仕様変更されたのが1966年で、フェンダー社がCBS社に買収後のことである。1969年にデカールが“トランジション・ロゴ”から“CBSロゴ”に変わり、力強い書体で“STRATOCASTER”と貼られるようになる。1970年に入ってフェンダー・ロゴの下には2個のパテント・ナンバーが記されていたが、1個のバージョンも存在。翌1971年にはパテント・ナンバーはひとつとなり、“WITH SYNCHRONIZED TREMOLO”の文字がないものも登場する。

70年代のピックアップだが、コイルは色の濃いエナメルで、線も固く、ボビンはグレーと、独特な風貌を持ち、サウンドは抜けの良いパワフルなサウンドが持ち味となっている。これはヘッドの大きさも影響しているが、ピックアップ単体がサウンドに及ぼしている影響力の方が遥かに強い。ピックアップ裏面には数字が印字され、最後の数字が年数を表わすことが多い。このピックアップが大きく仕様変更するのが、1974年後期以降である。それまで“スタガード”と呼ばれる、各弦に対してポールピースの高さが異なった仕様であったが、1974年以降より高さが均一な“フラット・ポールピース”に変更された。それまではジャズ・ギターに張るような太いゲージを前提にピックアップの仕様も考えられていたが、1970年代に入り、細めの弦が普及し始めたことにより、弦に対してのバランス調整の見直しが図られたと考えて良い。

もう一点大きなパーツ変更は“シンクロナイズド・トレモロ”である。従来まではプレートとスティール製のトレモロ・ブロックがセパレート式になっており、3本のネジによって互いを固定する方式であったが、1972年よりその両者が一体成型となり、材質も亜鉛ダイキャスト、サドルもダイキャスト製へと変更された。

また、フェンダーならではの画期的なアイデアといえば3点止めの“マイクロ・ティルト”である。これはネック・プレート裏側に備わった芋ネジを利用し、ネックの角度を調整できる仕組みである。フェンダーのようにネックとボディが分かれているタイプのギターには、組み込み後の微調整も必要となり、それを考えると大量生産に向いた方式であった。これに伴いトラスロッド調整口がネック・エンド側からヘッドに取り付けられるようになる。弾丸のような見た目からその調整口は“ブレット”と呼ばれ、今でも3点止めネック・ジョイントのストラトにはこの仕様が採用されている。

今回の1974-1975のストラトは、ちょうど前述した仕様の過渡期にあたるもので、アルダー・ボディ+白ピックガードの最終モデルである。1976年からピックガードは黒くなり、ボディ材も重めなアッシュ材へと変更される。見た目も重量の点においても、市場で人気が高いのは1975年以前のモデルである。ラージ・ヘッドのストラトはジミ・ヘンドリックスやリッチー・ブラックモアを筆頭とする名手らが使用したこともあり、見る者に“ロック”を想起させる。これら70年代のギターによって数々の名演が繰り広げられ、ロック・サウンドを作り上げたことは間違いない。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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