Vintage Guitar Gallery

1969 Epiphone Casino Cherry Red

エピフォンは古くはジャズ・ギターのブランドとしてギブソンと凌ぎ合い成長してきましたが、1957年にギブソン傘下になり、カラマズー工場に移ることになった。買収後も数々の名器を発表していき、ビートルズにも愛用されたことは、あまりにも有名。今回はエピフォンの中で特に人気の高いカジノにスポットを当てたい。

エピフォンはギブソン傘下になった後、1961年にカジノを発表。1959年にギブソンから発売されたES-330を参考に、ヘッドとピックガードのデザインをエピフォン流に昇華。ギブソンに吸収された後だからこそ誕生したモデルと言える。特徴はリビエラやES-335などのようにセンター・ブロックを持たず、フル・アコースティックなボディ構造を持っていることで、この構造ゆえに生まれる自然な箱鳴りが持ち味となっている。

ES-335などは19フレットでネックとボディがジョイントされているが、カジノは発売当初から1968年まで16フレット・ジョイントで組み込まれており、全体的にピックアップやブリッジの位置がボディの中心寄りにセッティングされているところも大きな特徴だ。これによりメロウでいて甘い音を見事に再現。ボディ材は3プライ・メイプル、ネックはマホガニー材と、ギブソンES-330と同じ材構成。

ピックアップにはP-90が選ばれ、レンジの広さと腰の太さを兼ね備えたそのサウンドは、カジノの空洞ボディ構造と相まって、抜群の相性を見せる。

1961?1963年まではヘッドの形状が大きめなデザインで、ヘッドの先端が長く少し大きめなスリム・ヘッドになるのは1964年になってから。スリム・ヘッドはビートルズのジョンとジョージが所有していたタイプで、こちらの方がカジノのイメージとしてお馴染みなのでは。ボディの形状も1964年より変化が見られ、ギブソンのES-335と同様、カッタウェイの角の部分が少し尖った形状となる。そしてヘッドのトラスロッド・カバーは、黒無地のタイプからエピフォンのトレードマーク・ロゴである“Eマーク”がデザインされるようになる。

指板上のポジション・マークは、1962年後半まではドットで、1962年後半からはシングル・パラレログラムになり、より洗練されたイメージとなる。

そして今回紹介する1969年製の大きな特徴が19フレット・ネック・ジョイントで、カジノでこの仕様が採用されたのが1968年からである。リビエラやES-335と同じネック・ジョイントとなったわけだが、この仕様の利点は、ハイ・ポジションにおけるプレイアビリティの向上と、ブリッジの移動に伴い、出音が高域寄りになったことであろう。

そして1968年からは、これまでサンバーストとロイヤル・タンの2色しかなかったところに、本器にも採用されているチェリー・フィニッシュがオプション・カラーとして加わった。

エピフォンのテイルピースは大きく分けて3種類。その内訳はエピフォン専用のトレモトーン、ビグスビーB-7、そしてトラピーズ・テイルピースである。ちなみに本器にはトレモトーンが搭載されている。、これは板バネ式のヴァイブローラーと同じくマエストロ製で、鉄の棒をアーム・サイドに取り付けた、エピフォン独自のユニークな構造を持つ。

1970年代になるとアメリカ本国での生産は終了するが、今でも全世界でカジノは愛し続けられており、アジア生産によりリーズナブルな価格帯で現在も販売されている。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し（現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍）、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60～70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

御茶ノ水本店FINEST GUITARS