テイルピース後方付近にビグスビー搭載跡が確認できる。

ダブル・リングのクルーソン・ペグ

[KLUSON DELUXE]の文字が2列になった「2連クルーソン」

人気の面ではドットと2分しているブロック・インレイ・ポジション・マーク。

ブラジリアン・ローズウッド指板に、ブロック・ポジション・マーク

ホンジュラス・マホガニー1ピース・ネック

1963 Gibson ES-335TD Cherry Red

  • Brand: Gibson
  • Model: ES-335
  • Color: herry Red
  • Year: 1963
  • Search For: "Gibson ES-335"

1963 Gibson ES-335TD Cherry Red

ギブソンESシリーズが登場したのが1936年。音量不足を解消するためピックアップを搭載し、新たな可能性に挑んだES(エレクトリック・スパニッシュ)シリーズが誕生した。その後ギブソンのシンライン・シリーズが登場するのが1955年で、当初はES-225TD、ES-350、BYRDLANDという3機種がラインナップされた。これら先代機に大きな影響を受けつつも、ダブル・カッタウェイ・シェイプという新スペックを採り入れたのが。前回に引き続き今回も再登場となるES-335だ。1958年にリリースされたES-335は仕様変更を繰り返しながら、その存在感を示し、音楽シーンに多大な影響を残してきたことは言うまでもないであろう。

前回の1963年製と大きく違うところは指板上のポジション・マークで、ドットからブロック型へ変更されたのが1962年のことである。また1963年に変更されたパーツとして大きいのがピックアップであろう。それまで採用されていた[P.A.F.]から、通称“ナンバード”と呼ばれる、パテント・ナンバーのシールがピックアップの裏面に貼られたタイプへと変更となった。また1963年よりマグネットのサイズが縮小し、コイルのターン数も減少したと言われており、甘くサスティンのある音が印象的である。

ルーソン・ペグのギア・カバーに刻印されている[KLUSON DELUXE]の文字が1列より2列に変更され、これらは俗に「2連クルーソン」と呼ばれるようになる。このクルーソン・ペグの仕様は、フェンダーにおいても同様に行なわれており、このペグの刻印スタイルで年代を見分けることが可能となっている。以下に年代の見分け方を一覧してみた:

刻印ナシ:~1955年

1列:1956~1963年

2列:1963年~

またプラスティック製ペグ・ボタンのコブの数については、1959年までが1コブで、1960年以降より2コブに変更となる。このコブは“クルーソン・シングル(orダブル)リング・キーストーン・チューナー”と呼ばれている。1963年頃までのツマミは、経年変化でとても縮やすく、ボロボロになるものが多い。色合いも初期のものは薄く白っぽいが、60年代になると少し黄ばんだ縮みにくいものへと変わった。古いクルーソン・ペグはこうしたトラブルが多いことから、オリジナルは外した上で保管し、新しいクルーソン・ペグに交換して、使用している人も多い。

1963年製のネック・グリップは指板の幅が少し狭く、握り心地の良いラウンド・ネック。一方の1963年製はナット幅がやや広めで、少し肉厚の薄い形状をしており、SGに近いグリップ感である。

60年代初期オプションで多いのはビブラート・ユニットで、最も初期のものはアームを横に引っ張り、コントロールするスイング・アウェイ・プルサイド・ウェイが搭載された。ただES-335で圧倒的に多いのがビグスビー・アーム付きだ。中にはストップ・テイルピースの穴も予め空けてあり、そのアンカーを隠すため[CUSTOM MADE]の文字が彫られたプレートが装着された個体もある。カバーを取ればストップ・テイルを取り付けることが可能な、まさにカスタムメイドなオプションである。今回のES-335はオリジナルはストップ・テイルピースだが、いったんビグスビーを後付けしたものの、その後、やや後方の位置にストップ・テイルピースを取り付けたという、なかなか凝った仕様変更がされている。

1961年よりセンター・ブロックのリア・ピックアップ付近にキャビティがザグられている。これはES-345やES-355に搭載されていたバリトン・スイッチ用のチョーク・コイルを収めるためのスペースである。ただES-335に関しては、このキャビティがあるものとないものが混在している。一般的にはキャビティなしのバージョンの方が音が太いと言われており、人気が高い。今回紹介している1963年製の個体は、まさにキャビティなしのバージョンで、ソリッド感溢れる詰まった太い音が魅力的だ。加えてボディの形状もカッタウェイのコブが盛り上がったタイプで、見た目も非常にカッコいい。

ES-335については語り尽くせないほどの魅力が溢れており、まさに名機と言うに相応しい。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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