ラウンド貼りのローズウッド指板。

ラージ・ヘッドには、トランジション・ロゴが入る。。

1966 Fender Stratocaster 3 Tone Sunburst

1966 Fender Stratocaster 3 Tone Sunburst

エレクトリック・ギターの歴史上、ギブソン社と並ぶ最重要メーカーのひとつであるフェンダー社が発足したのが1945年。小さなラジオ工場からスタートした同社であったが、1950年にエレキ・ギターの礎となるテレキャスターを発売(発売当初のモデル名はブロードキャスター)。そして1954年に歴史的なスタンダード機、ストラトキャスターが誕生した。

その後、ストラトは1959年に1ピース・メイプル・ネックからローズウッド指板へと仕様変更するなど、さまざまな改革が行なわれた。そうした中で、フェンダー社は、1965年にCBS(コロンビア・レコード)に買収されることになってしまう。そうした背景の中、生産体制も変わり、デザインにも少し変化が生じることになった。

今回の1966年製を例にすると、まずヘッド形状だが、それ以前のモデルに比べて、サイズが大きくなり、厚みも増し、外周ラインまでも変わっている。意外と気づかない部分で言うと、ナットから6弦のストリング・ポストまでの距離が1965年までのモデルと比べて異なっており、この外形上の変化により弦のテンション・バランスも変わったことをご存知であろうか。

1965年よりジャンボ・フレットがオプションになり、ラージ・ヘッドの時代に変わってからは、大きめのフレットが打たれたストラトが多く見ることができる。ちなみにラージ・ヘッドのストラトは、1965年後期から70年代全般に採用されることになる。スモール・ヘッドとはひと味違うルックスとサウンドを持つラージ・ヘッドのストラトは、ジミ・ヘンドリックスやリッチー・ブラックモア、イングウェイ・マルムスティーンら大物アーティストたちの使用により、人気は非常に高い。

この時期のストラトは、コイルの皮膜がエナメルに変更するなど、ピックアップが改良されており、アタック感のあるパワフルなサウンドになったまた、ギターのヘッドが重くなるとサステインが伸びるようになり、太くストレートなサウンド傾向になるのだが、ラージ・ヘッドになったことで、そういった恩恵を得ることになる。

塗装の質感も少し硬くなり、サンバーストの下地の黄色と赤みが明るめに残るカラーリングとなったことで見た目も派手になった。ピックガードは色が透けない硬質塩ビの3プライに変わり、木材面ではハカランダ指板が1966年より使用されなくなったことで、音のタッチやニュアンスも以前のものとは変わった。

ヘッドのパテント・ナンバーも表記していた数が4つから3つへ変更。ネック・プレートには“1”を先頭にした6桁のシリアル・ナンバーが入り、Fマークのロゴも一緒に刻印されるようになった。ネック・ヒール部に印字されていたネック・デイトも変更され、機種を示す数字が[2]から[13]となる。

指板は色の濃いハカランダ(ブラジリアン・ローズウッド)を使用。レスポンスの良いアタック感と自然なコンプレッション感が同居し、ギター全体で鳴っているという印象だ。フィンガーピッキングからストロークまで幅広く弾ける、まさに万能なアコースティック・ギターという仕上がりを見せている。

エリック・クラプトンがクリーム時代から使用していたES-335も1964年製である。フェンダーにおいてもストラトを筆頭に、1964年以前に作られたものは、同じヴィンテージでも特に人気が高い。この年までに作られたギターには、何か特別なものがあるのかもしれない。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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