美しい杢が出たマホガニー・ボディ。

ピックガードはこのモデル専用にデザインされ、表側はパーロイド柄になっている。ブリッジ・サドルは、ステンレス・スティール・タイプ。

ヘッド表にはラッカー・フィニッシュが吹かれている。

1965年頃よりクルーソン・ペグに替わり採用されたFキー・ペグ。

本器は1ピース・メイプル・ネックだが、同年代であれば、貼りメイプル指板のものも存在する。

1971 Fender Telecaster Thinline Natural

1971 Fender Telecaster Thinline Natural

ボディはホロウ構造で、Fホールが設けられ、少し大きめなピックガードが印象的なテレキャスター・シンラインは、1968年にテレキャスターのバリエーション・モデルとしてラインナップに加わったモデル。

ボディ材はアルダーとアッシュが基本であったが、今回紹介する1971年製はレアなマホガニーを採用したバージョン。初めてナチュラル・カラーを採用したモデルということもあり、この個体においてもマホガニーの木目が美しく引き立ち、見た目も非常に洗練されている。この大人っぽいルックスと、ホロウ・ボディ特有のウォームなトーンにより、カーティス・メイフィールドや斎藤誠を筆頭に多くのギタリストらが愛用し、今でも復刻モデルが生産されるほど人気モデルとなっている。

1972年にテレキャスター・シンラインは大幅な仕様変更が行なわれた。テレキャスターのみならずフェンダー・ギターと言えばシングルコイル・ピックアップを搭載していることが相場であったが、モデル・チェンジしたテレキャスター・シンラインにはハムバッカー・ピックアップが搭載された。このPUをデザインしたのが、ギブソン在籍時にハムバッカーPUを開発したセス・ラバーである。この他にも、マイクロ・ティルト機構を搭載したネックの採用や、3ボルトによるネック・ジョイントなど、他のフェンダー・ラインナップが1971年に刷新したスペックがこのモデルにも投入された。

 テレキャスター・シンラインは、同時期に発売されたオール・ローズ・テレキャスターと同様、ボディ内部はホロウ構造で同じようなルーティング加工が施されている。しかしオール・ローズ・テレはボディの側面部から見て、ちょうどセンターの位置で貼り合わせているのに対し、シンラインはボディ・バックで蓋をする形となっており、両者の構造に違いが見られる。

 発売当初はラッカー塗装であったが、1968年後半頃からネックにポリエステル塗装が使われるようになった。この塗料の恩恵により変色しにくくなり、さらに強度も高まったため、比較的保存状態の良いものがヴィンテージ市場に残っている。ただしヘッドの表面はデカールを貼り終えた後に保護のためラッカーを吹いているため、ヘッドのみが色焼けしたものも多く見られる。

ハードウェア面においての変更箇所は、それまでのクルーソン・ペグに替わり、フォレスト・ホワイトが考案したFチューナーを採用。このペグは1965年発売のエレクトリックXIIなどから使われるようになったもので、ギア・カバー以外のパーツが左右兼用という効率の良さから、12弦ギターには打ってつけということで採用されたと思われる。もうひとつの変更箇所がブリッジ・サドルで、それまでのネジ溝が切られたスパイラル・サドルから、弦が乗る部分だけ溝加工を施したステンレス・サドルに替わっている。

1965年以降のCBS時代は、生産面においてはひたすら効率化が求められていた時期で、それは塗装やパーツ、製造方法などを見れば一目瞭然である。CBSへ買収後もレオ・フェンダーは1970年までコンサルタントとしてCBSフェンダーに在籍をしていた。それを踏まえると、テレキャスター・シンラインはレオのもとで生まれた最後の名器!?、と勝手な解釈をしてしまうのは私だけであろうか。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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