小ぶりなテレキャスター・スタイルのヘッド。

ネック・ポケットには、ほとんど塗料の跡が見られない。

オリジナル・プレシジョン・ベースと同様、1本の弦に対してポールピースが1つという仕様のピックアップ。

ピックアップはボディ直にネジ止め。ピックアップ・デイトは[4-16-68]と記されている。

コントロール・キャビティとネックを外した様子。

ポットは2つとも250KΩで、キャパシターは0.05mF。

弦は裏通しで、サドルには2本の弦が乗る。

ピックガードは、透明のアクリル板を使用。

1968 Fender Telecaster Bass Paisley Red

1968 Fender Telecaster Bass Paisley Red

1968年にオリジナル・プレシジョン・ベースの復刻版としてテレキャスター・ベースが発表。その仕様だが、大まかには50年代当時の仕様は踏襲されている。弦はボディ裏から通す方式で、ブリッジはサドルに2本の弦を乗せるタイプを採用。この他、ピックガードのデザインやピックアップ・フェンス、ヘッドの形状、コントロール、コンターなしのスラブ・ボディといったところが継承されている。

その一方でマイナー・チェンジされた箇所は、ピックガードが1プライのままだが、黒のベークライトからプラスティック製の白へと変更。当初は合成樹脂製の1プライのものが使用されていたが、すぐに3プライへと変更となるが、ピックガード側面のエッジ加工はなく1プライの外見は受け継いでいた。ネックは指板まで含めた1ピース構造ではなく貼りメイプル指板で先に発表され、1ピース・ネックとなるのは60年代の後半となってからであった。ピックアップは、50年代のシングルコイルを再現したものをマウント。

テレキャスター・ベースのバリエーションとして、ペイズリー・レッドが登場。特徴的なボディの柄は当時の建材である壁紙がそのまま使用され、ペイズリー模様の壁紙がボディの表と裏に貼られており、サイドはその壁紙と同じ色合いのピンクがサンバーストの要領でフィ二ッシュされた。

サイドのピンク・フィニッシュはパール系の派手な塗料を使用し、保護のために厚くクリア・コートが上から吹かれていた。実はこの塗料は当時のホット・ロッド・カーに用いられていたもの。ちなみにフェンダー社はこれまでにもデュポン社製の車用塗料をレア・カラーとして、たびたび使用していたことでも知られる。

フェンダーのペイズリー・レッドとブルー・フラワーは、縮みの少ない壁紙と厚塗りのトップ・コートとの伸縮率の違いから、30年近く立った今ではほとんどのものが表面の塗装がウェザーチェックとして割れている。

 1968年当時は、CBSの運営がひどく非難された状況ではあったが、常に最新のアイデアが生まれ、改良と開発は継続して続けられていた。製品管理もしっかりと行なわれ、今回紹介するペイズリー・テレキャスター・ベースは、ネック、ピックアップ、アッセンブリーに至るまで、きっちりと製造年の分かるシリアル・ナンバーが印字されている。  1967年にサンフランシスコで起こったムーブメントである“サマー・オブ・ラブ”の影響から、時代のムードを捉えたサイケデリックなこの仕様は、ペイズリー・レッドと別バージョンであるブルー・フラワーも用意され、テレキャスター・ベースの他にテレキャスターも製造された。収集家の間でコレクターズ・アイテムとなっているだけではなく、現在ではフェンダー・ジャパンや本家カスタム・ショップから忠実な復刻モデルが発売されており、元マスター・ビルダーのフレッド・スチュアートはこのフィニッシュを得意としていた。

Written by プロフェッサーKenny 岸本

平成8年入社。ヴィンテージ・ギターに関しての知識はイシバシでNo.1! プロ・ミュージシャンのお得意様も多く、彼のマインドに惚れ込み、多数お店に通っていただいている。また、英語力もまずまずのため、直接ギター工場のマスター・ビルダーたちと話し合いすることも。彼自身のフェイバリット・ミュージックはカントリー・ロック、ブルーグラスなど。

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