丸型のストリング・ガイドは、1956年までの仕様。

面取りが丸く仕上げられているのは初期型の特徴。

指板面の塗装が、いい感じに剥がれている。

シリアル・ナンバーが打たれたネック・プレート。

タデオ・ゴメスが手書きで描いたネック・デイト。

ボディ・デイトはバック・キャビティ上にマーキング。

ノブ類の形状や材質は、初期型ならではのもの。

四角いキャパシター(0.01mF)がいい味を出している。

PUキャビティの様子。

1954-1955 Fender Stratocaster Sunburst

  • Brand: Fender
  • Model: Stratocaster
  • Color: Sunburst
  • Year: 1954-1955
  • Serial Number : 76xx
  • Neck Date : TG-2-55
  • Body Date: 11/54
  • Search For: "Fender Vintage Stratocaster"

1954-1955 Fender Stratocaster Sunburst

ストラトキャスターは、1954年春にフェンダー社の第3モデルとして発表された。その形状は当時のプレシジョン・ベースを源流を持ち、ホーンを伸ばすことで斬新なデザインと、ボディの軽量化が計られた。テレキャスターでは、ブーミーなフロントPUサウンドとトレブリーなリアPUサウンドが特徴であったのに対し、ストラトではその中間のサウンドを設けるために、3ピックアップ構造が採用された。54年の3月には生産が開始され、現在でも開催されているNAMMショーに出展するため、急ピッチでラインを稼動し、同年9月には本格的に量産が開始された。

1stロットのものは、プラスティック・パーツに特徴を持つ。もともとプラスティックが採用された理由として、金属パーツでのタッチ・ノイズを嫌ったことなどが挙げられる。ノブは「ショート・スカート」と呼ばれる、つばの小さい形状で、やや透明感のある硬い材質が使用された。スイッチにはフットボール型のノブが装着されている。ピックアップ・カバーの形状も現在とはやや異なる。ピックガードの形や、ピックアップの数に合っていないノブの数や、ジャック・プレートのシェイプなどを見ても、視覚的に考えられたデザインであることが読み取れる。1954年の途中からは本格的な量産体制に突入し、これらプラスティック・パーツも白く透明感のないメラミン製のものに変更され、1956年半ばまでこの仕様は継続される。

シリアル・ナンバーは、本来はブリッジ・ベースに打刻されていた。しかしストラトはブリッジ表側にスペースがないため、当初はバック・プレートに打刻されていた。しかし、ハードテイル(ノン・トレモロ仕様)が登場することで、バック・プレートを装備しない仕様が出てきたため、シリアル・ナンバーは、ネック・プレートへ打刻されるようになった。

ストラトのピックアップは、ポールピース自体がマグネットとなっており、各弦ごとの音量バランスを考えて、マグネット・ポールピースの高さは変えられていた。これが「スタッガード」と呼ばれる仕様で、1974年まで採用されることになる。ワイヤーは巻き始まりのターミナルから巻き終わりのターミナルまで切れることなく巻かれており、テレキャスターで使用されるエナメルとは異なる「フォーム・バー」と呼ばれる皮膜でコーティングされている。

なおワイヤーを巻きつける作業は、レオ・フェンダーがデザイン&製作をしたオリジナルのワインディング機が使用されていたという。これはペダル・コントロールで速度調整が可能なミシン用のモーターが使用され、ボビンは横倒しの状態で、両端にかかるテンションの負荷を避けるためにベルト・ドライブ方式(輪ゴム説もある)で慎重に手で巻かれていたようだ。現在のようなテンションを調節しながら巻く機械などは存在しなかったため、親指と人差し指の間にワイヤーを挟みながらテンションを調節し、コイル線は重なり合うことでムラができないように細心の注意が払われ製作された。

巻きがやや不均一に見えるが、これが入魂の手巻きピックアップの味わいとなったわけだ。これらのピックアップは、ピックガードへ吊り下げられるようにしてマウントされており、これもストラトキャスター特有のサウンドを形成する上で、大きな特徴となった。ピックアップを吊し方式でマウントしたものは、木ネジでボディに直接装着されたものに対して、生産効率の面でも非常に有利であった。ボディの完成を待たずにして、別の作業ラインでピックガードにピックアップやその他の電装系パーツを組めるので、効率のいい生産体制を築くことができた。  今回紹介するストラトは、ネック・デイトはタデオ・ゴメスの直筆で55年2月、ボディ・デイトは54年の11月と記されており、年末から年始にかけて製作されたものと判別できることから「1954-55年製」と呼んでいる。数十年前までは高くても150万円程度だった価格も、現在は1,000万円を超える高値で取り引きされている54年製もあり、個体数の激減と共に月単位で価格は更新されている。音楽を楽しむためのツールを創造したレオ・フェンダーがもし生きていたら、この事実をどう感じ、何を語るのだろうか。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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