ネックと指板の境目に、うっすらラインのようなものが見えるのが、貼りメイプル・ネックの証。

指板とネックの接着面は平ら(スラブ)ではなく、曲面(ラウンド)になっていることが、ネック・エンドから確認できる

ネック裏側には、トラス・ロッドを仕込むためのスカンク・ストライプが入っていないのも貼りメイプル指板の特徴。

ボディとピックガード直下のフィニッシュを比べれば、黄色く褪色した様子が一目瞭然にわかる。

テレキャスターのフロント・ピックアップはネジがボディに直付けのため、ピックガードを取らないと外せない。

ブリッジ及びリア・ピックアップを外したところ。PU底部にはブラス製のシールド板が付いている。

カラフルな布線により配線されており、見た目も美しい。緑や青など寒色系のコードがアース線となっている。

1968 Fender Telecaster Blond

  • Brand: Fender
  • Model: Telecaster
  • Color: Blond
  • Year: 1968
  • Serial Number : 231xxx
  • Neck Date: 3 DEC 68 B
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Detail of 1968 Fender Telecaster Blond

50年代初頭、レオ・フェンダーは「ブロードキャスター」と呼ばれるエレキ・ギターを製作しました。しかし、このモデル名はグレッチ社の商品とダブってしまったため、一時商品名のない時期がありました。この時期の愛称が「ノーキャスター」です。

当初は2ピックアップ仕様にてエスクワイヤーが製作されました。この時期のエスクワイヤーには、トラス・ロッドが入っていないものがプロトタイプとして製作されましたが、当時フェンダー社でセールスを担当していたドン・ランドールによって、この仕様だと販売しずらいとの判断で、トラス・ロッドが標準装備されました。

その後、エスクワイヤーが1ピックアップ仕様(リアのみ)のモデルとなり、2ピックアップ仕様のモデルはテレキャスターとしてラインナップされるようになりました。「テレキャスター」という新モデル名のもとで発売されるようになったのが1952年からとなります。フェンダー社はその後、1965年1月にコロンビア・レコードに企業買収をされ、CBSフェンダーの時代が始まります。CBSは従来の製作方法を徹底的に見直し、コスト削減と生産効率の向上を狙い、新しいモデルの開発とモデル・チェンジを繰り返しました。今回ご紹介する68年製のテレキャスターも従来の常識をぶち破る、さまざまなアイディアが盛り込まれております。

まずは、CBS以降に本格的に設計された貼りメイプル指板があげられます。1959年まで、フェンダーはメイプル1ピース・ネックを採用し、1960年より指板材としてローズウッドを採用するようになります。よって1960?66年頃まで、メイプル指板は原則としてなかったことになります。そのメイプル指板のひさびさの復活が貼りメイプル・ネックなのです。構造的には、ローズウッドとメイプルという異種材同士の組み合わせに比べて、ネック・コンディションが安定しやすい上に、トラス・ロッドの仕込みにおいてもメイプル1ピース・ネックより、はるかに作りやすいというメリットがありました。

貼りメイプル・ネックの作られた期間は1960年代半ばから1970年代初頭までと非常に短命でしたが、ジミヘンやリッチーなど、大物ギタリストが愛用したことにより、その後人気の仕様となったことは説明不要でしょう。

また、この時期のフェンダーには66年製のポットが使用され、66年に大量に仕入れた形跡を見ることができます。ボディの形状は71年頃まで、このタイプが継承され、往年のシェイプとなっております。古くはロイ・ブキャナン、ジェフ・ベック、ウィルコ・ジョンソン、デイヴ・ギルモア。80年代以降のアーティストとしては故ジョー・ストラマーやクリッシー・ハインドなど、テレキャスターはジャンル問わず、さまざまなアーティストたちに愛されてきました。現在では、故ジョン・イングリッシュを始め、多くのマスター・ビルダーたちによって「貼りメイプル」は復刻されており、当時のクリスピーかつ粘りのあるサウンドを再現しております。

Written by プロフェッサーKenny 岸本

平成8年入社。ヴィンテージ・ギターに関しての知識はイシバシでNo.1! プロ・ミュージシャンのお得意様も多く、彼のマインドに惚れ込み、多数お店に通っていただいている。また、英語力もまずまずのため、直接ギター工場のマスター・ビルダーたちと話し合いすることも。彼自身のフェイバリット・ミュージックはカントリー・ロック、ブルーグラスなど。